Beyond Borders
国境を越えて

グローバルな成長を可能に
するモバイルゲーム業界向け
インサイト

価値の高いユーザーは思いがけない場所にも存在します。多くのモバイルマーケターにとって、過去に成功を収めたことがある馴染みのある地域に固執することは楽かもしれません。しかし新しい調査では、このような快適ゾーンの外に踏み出すことで、マーケターはユーザー獲得戦略を見直し、継続的な成長を実現できることが示されています。

アプローチおよび調査方法について

この調査では、インストール数、インストールあたりのコスト(CPI)、マーケティングの予算全体の推定値を含む、4,000件におよぶアプリのデータを使用して、世界のゲームユーザー獲得の状況を分析しました。また、アプリ内購入 (IAP) が可能な数千ものモバイルゲームアプリのユーザー行動も調査し、2023年9月から2024年9月の調査期間におけるIAP収益は30億米ドルに上りました(詳細についてはサイドバーの「アプローチおよび調査方法」をご覧ください)。

アプリ内購入 (IAP) とは、ユーザーがアプリ内で仮想商品やプレミアム機能を購入することを指します。これは、モバイル ゲームにおける主な収益源となります。

主な調査結果
$290億
モバイルゲームのIAP促進に向けてマーケッターが2025年に費やすユーザー獲得コストの推定
71%
ユーザー獲得コストの71%が10市場に集中しており、うち40%を米国が占める
70-85%
IAP収益の70~85%は国やジャンルを問わず上位10%の課金者が牽引

韓国(21米ドル)、日本(19米ドル)、米国(17米ドル)など、ユーザー獲得のコストが最も高い市場は、最も価値の高いモバイルゲーマーを有する市場でもあります。しかし、この状況はジャンルによって大きく異なり、価値の高いユーザーは世界中に存在します。

有料ユーザー獲得戦略により、主要市場を超えて、ブラジル、ギリシャ、アイスランド、オランダ、 南アフリカ、アラブ首長国連邦などで効率的に成長を促進することが可能です。

主なテーマ
市場規模と有料ユーザー獲得のダイナミクスが地域やジャンルによってどう異なるか
01
アプリ内購入の総収益とユーザー価値は地域やジャンルによってどう異なるか
02
ターゲットを絞った有料ユーザー獲得の活動が、どのように事業拡大の取り組みをサポートするか
03
01

快適ゾーンにはまっていませんか?
ユーザー獲得支出の集中

ユーザー獲得 (UA) は、モバイルアプリの新規ユーザーを引きつけ、獲得するプロセスを指し、多くの場合、有料マーケティング活動を通じて行われます。

ヒント
ハイライト された単語にカーソルを合わせると、定義が表示されます。

ユーザー獲得 (UA) とは、多くの場合有料のマーケティング活動を通じて、モバイル アプリの新規ユーザーを引き付け、獲得するプロセスを指します。

馴染みのある市場にユーザー獲得支出が集中

ユーザー獲得の予算は一握りの国に大きく配分されています。これは意外なことではなく、一般的にマーケターは、すでに成功を収め、ユーザー獲得の環境をよく理解している地域を優先します。 その結果、モバイルゲームではユーザー獲得に向けた予算全体の70%以上がわずか10カ国に集中しています。

米国はユーザー獲得投資のシェアが最も大きく、アプリ内購入(IAP)に注力する世界中のモバイルゲームマーケターによる総支出の40%を占めており、これは第2位の国の7倍に相当します。オペレーションシステム(OS)について見ると、世界レベルではAndroitの方がユーザー獲得支出の全体的なシェアが大きいものの、米国、カナダ、英国などiOSの普及率が高い国では、逆の傾向が見られました。

User acquisition (UA) refers to the process of attracting and acquiring new users for a mobile app, often through paid marketing efforts.

ユーザー獲得のダイナミクスはジャンルや市場によって異なる

ユーザー獲得はほんの一部の国に集中しているかもしれませんが、その全貌をもっと深く理解する必要があります。 モバイルゲームのマーケターにとって、ジャンルは極めて重要な要素です。 つまり、ユーザーの獲得に向けた支出において、単に適切な場所をターゲットにすることだけではなく、特定のゲームごとに適切な市場を見つけることが重要です。

ロールプレイングゲーム(RPG)では、ユーザー獲得予算の41%が日本、韓国、台湾に費やされています。一方、マッチングやカジノなどのジャンルでは米国と英国がリードし、投資の50%以上を占めています。また、ハイパーカジュアルゲームでは、ブラジルやインド、インドネシアといった新興市場への投資が大きく、他のジャンルの4.5%に対し、14%とシェアを大きく伸ばしています。

拠点の近くに予算を向ける傾向

言語や文化を含む市場ダイナミクスは、モバイルゲームのマーケターがユーザー獲得に向けた予算の配分を決定する上で重要な役割を果たします。 米国を拠点とする企業を含む多くの企業にとって、これはより多くの予算を国内市場に向けることを意味します。しかし、すべての企業がそうとは限りません。

例えば、国外市場に重点を置く中国のモバイルゲームマーケターは、よりグローバルな戦略を採用しており、米国へのユーザー獲得予算の割合は36%にとどまり、より多くの予算がアジア太平洋(APAC)地域、欧州、その他の国際市場に振り向けられています。

マーケターの多くが一部の少数の国に的を絞りがちですが、
馴染みのある国を超えた場所に
未開拓のチャンスが眠っている可能性があります

02

見過ごされているチャンス?
価値の高いユーザーの隠れた存在

モバイルゲームのマーケターにとって重要な課題は、価値の高いユーザーを見つけることです。有料ユーザー1人あたりの平均収益 (ARPPU) などの指標を国レベルで分析することで、マーケターは次の大きなチャンスが眠っている場所を把握しやすくなります。

有料ユーザーあたりの平均収益 (ARPPU) は、ユーザーのアプリ内支出の平均を測定し、マーケティング担当者に最も価値のあるプレーヤーがどこにいるかを明確に示します。これは、帰属しているソースと帰属していないソースの両方を考慮します。

マーケティングコストとアプリ内購入の関係

一見すると、ユーザー獲得のコスト(有料ソース全体)とアプリ内購入の総収益(有料ソースおよびオーガニックソース全体)は密接に関係しているように見えます。 米国をはじめとする、ユーザー獲得への投資が大きい国は、アプリ内購入の総収益でも大きなシェアを占めており、マーケターが効果的に予算を投入していることを示唆しています。

一方、韓国や日本、台湾などの国では、アプリ内購入の総収益がユーザー獲得コストのシェアをはるかに上回っています。その理由は、国外マーケターの成功を阻む地域特有のダイナミクスにあります。このような市場では、その地域のユーザーの好みに合わせられるマーケターにチャンスがあります。

国によって異なるユーザーの価値

ジャンルによるARPPUの違いを認識することが、それぞれの市場の可能性を理解する上で重要です。 各ジャンルは、さまざまなパターンの課金行動を行う、異なるタイプのプレイヤーを引きつけ、これが各国のARPPUに大きく影響します。

例えば、マッチングゲームのようなカジュアルなゲームでは、他のジャンルに比べてARPPUが低い傾向があります。しかしイスラエルやノルウェー、スイス、米国などでは、このジャンルのユーザーの価値が世界の他の国々よりも比較的高いことが示されています。一方、香港、日本、シンガポール、韓国、台湾を含む東アジア・太平洋地域市場は、RPGや戦略ゲームなど、アプリ内課金が多いジャンルで一貫して他の地域よりも高いARPPUを示しています。

ユーザー価値とグローバルなチャンスをセグメント化する
フレームワーク

グローバルに事業を拡大する場合、マーケターは成長の可能性、ユーザー価値、ローカリゼーションのニーズなどの要素に基づいて国を分類することを検討する必要があります。以下の世界地図は、マーケターが事業拡大のチャンスを整理して計画する出発点として役立ちます。

言語的に類似性がある国々をグループ化することで、クリエイティブプロセスを合理化し、ローカライズされた関連性の高い体験をユーザーに提供しつつ、キャンペーンをより迅速に展開することができます
— Sami Khan氏(Atlas Reality, CEO)

マーケターは、ユーザー価値、総収益拡大の可能性、
地域の市場環境を考慮しつつ、新規ユーザーにリーチを広げ、
新たなチャンスを開拓するにはどのような
有料ユーザー獲得戦略が必要かを理解することが重要です

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グローバル展開:有料ユーザー獲得戦略による価値の高いユーザーベースの拡大

長期的かつ収益性の高い成長への道は、価値の高いユーザーを見つけることから始まります。このようなユーザーに狙いを定めてアピールし、関心を引くことで、マーケターは新たな事業拡大の道を切り開くことができます。

価値の高いユーザーを見つける鍵を握る機械学習ベースの
ユーザー獲得戦略

マーケターは「可能な限りコスト効率の高い方法で価値の高いユーザー獲得する」という、いたってシンプルな公式を採用しています。ここで高度な機械学習が役立ちます。膨大な量のリアルタイムデータを活用し、時間をかけて継続的に学習する機械学習ベースのユーザー獲得戦略により、見落とされがちな価値の高いユーザーを正確に見つけ出し、ターゲット化することが可能になります。その際、ユーザー獲得コスト、ユーザー価値、IAPによる総収益拡大の機会の間に存在する関係性を理解することが非常に重要です。以下のチャートを操作することで、さまざまな地域、市場、ジャンルにおけるこのような関係性を探ることができます。

注:すべての指標は相対的なものであり、あらゆる規模の市場でキャンペーンを成功させることが可能です。以下のインサイトは、新たなユーザー獲得戦略の策定における出発点として役立つことを意図しています。

馴染みがあり、広告活動に慣れている大規模な市場にマーケターが注力したくなるのは無理もありません。しかし、このような従来の市場の外側に競争が少なく、より効率的にKPIを達成できる大きなチャンスがあります。
— Sarah Yamanouchi氏(Rec Room, Head of Growth Marketing)

広い世界に眠っている
チャンスを発掘

各アプリには独自の特徴があり、カスタマイズされたアプローチが必要であることを、新しい市場に参入する前にマーケターが認識していることが重要です。それを踏まえた上で、以下に挙げる、ユーザー獲得にグローバルに取り組む際に考慮すべき一般的なベストプラクティスを参考にしてください。

地域拡張のベストプラクティス
国のセグメント化
言語、市場機会、ユーザー行動に基づいて類似性のある市場をグループ化し、ターゲット化と予算の活用を最適化します。
アセットのローカライズ
国をセグメント化した後、言語と文化的な要素を考慮しながらクリエイティブアセットをカスタマイズし、各地域における対象ユーザーのエンゲージメントを最大化します。
ソフトローンチの多様化
アプリのソフトローンチを検討している場合は、多様な市場でテストを行い、有料ユーザー獲得の取り組み拡大に向けて地域的な学習を強化することをお勧めします。

ソフトローンチとは、本格的なハードローンチの前に、パフォーマンスをテストし、フィードバックを収集するために、特定の市場で製品またはアプリを限定的にリリースすることです。

辛抱強く待つ
機械学習モデルが学習してその価値を最大化するまで時間を要します。そのため、モデルが学習フェーズを終えてからパフォーマンスを評価します。

価値の高いユーザは世界中に存在し、馴染みのある少数の市場に限定されているわけではありません。ユーザー獲得に向けた活動を新しい地域に拡大することで、マーケターは未開拓の可能性を引き出し、アプリビジネスを新たな高みへと導くことができます。

次の大きな勝機は隠れているわけではありません。国境を越えて未開の地を探索し、眠っている勝機をつかみましょう!